8日(木) レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』at サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会

420 cm × 910 cm

---

 

 1495年〜1497/98年にかけて描かれたレオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』では、建物の漆喰面と一体化するフレスコ技法ではなく、漆喰が乾いてから触剤(卵や乾性油の可能性あり)を用いて描くセッコ技法が採用されている。これは、彼の描画スタイル(遅筆)から模索した新技法。とはいえ、食堂という環境も影響し湿度などから画面損傷を余儀なくされた。さらに、修道院の改修、ナポレオン軍の厩舎使用、第二次世界大戦空爆、合わせて度重なる安易な修復で原型をほとんど失った。本作は500年の時を経、20年間にわたる大修復(1979年〜1999年)によって細部が蘇り、わたしたちは鑑賞の幸せに包まれている。
 しかし、12使徒の性格や業績に疎い小生には、人物描写の見事さから構図の奥行きをさらに引き出す「鍵」が見つけられない。色彩を戻し、表情から物語を読み取るキリスト教世界の願いを助ける現在の人工光の役立を認めはするが、空間全体の物語性を希薄にさせていると思う。なので、教会でのパチリを「想像する自然光」に置き換えてみた(壁面一部補正)。

 『最後の晩餐』のテーマは、ダ・ヴインチ以前から幾多の画家が描いてきたが、新しい構成と遠近法によって「この中に裏切り者がいる」とキリストが告げる劇的な瞬間が見事に浮かびあがっている。ここでは、午前中にドゥオーモで驚いた12使徒の一人、バルトロマイを確認しておこう。彼は一番左に座している。→ 

https://manrayist.hateblo.jp/entry/2023/06/28/060000