10日(土) ウッフィッツィ美術館-2 ボッティチェッリ

Room 8フィリッポ・リッピ『聖母子とニ人の天使』(1450-1465頃)

Room 8ピエロ・デラ・フランチェスカウルビーノ公夫妻像』(1465-1472)

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● ウッフィッツィ美術館はイタリア・ルネサンス絵画の宝庫。門外不出というサンドロ・ボッティチェッリ(ca.1444-1510)の『春』と『ヴィーナスの誕生』が観たくてこの場に立ったのです…… ところが、没入出来ません。人が多いのも理由だけど、小生は遠近法に囚われてしまったと実感。装飾的すぎて絵肌の表面に留まってしまうのです。彼の表現は、遠近法という時代の主流からも、キリスト教の教義からも離れ、個人的にすぎ、寝室に飾る絵画の位置付け。その為、19世紀末にイギリスのラファエル前派との関連から注目されるようになるまでの400年の間、忘れられたのではないか ── と思う。
 ある研究者は「純粋な女性が他者を愛する喜びを知ることで、さらに美しくなるということを表す」と記しているが、愛の女神は淫欲の象徴であり、キリスト教からすると異端、作品はギリシャ文化を反映しているという。ただ、『春』の画布に「花咲き栄える街」の美しさが漂うのはフィレンツェの人々の心情にピタリ一致するのは間違いない。愛の三段階(純潔、愛欲、美)が「身の破滅」に繋がると知る者には警告の絵画です。

 ツァーのガイド氏が「建物と一体だった絵画(フレスコ画)が、本作によって持ち運び可能な絵画(油彩)となった時期を証明する」と説明したのが、耳に残る。


Room 10-14

サンドロ・ボッティチェッリ『春』(1482頃)

Room 10-14

サンドロ・ボッティチェッリヴィーナスの誕生』(1483頃)

 

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マン・レイ研究者として注目すべきは、下掲したウッチェロ「こちらでは遠近法が酷使されている」(ハハ) 三連祭壇画の中心とされ、両翼の2作はロンドンのナショナル・ギャラリー、パリのルーブル美術館が所蔵。

Room 8

パオロ・ウッチェロ『サン・ロマーノの戦い』(1450年代 or 1460年代)

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 マン・レイは油彩『1914年』に関連して自伝(1963年、日本版美術公論社1981年)で以下の言及をしている。
 「わたしはウッチェロについての本を読んでいた。複製で見る彼が描いた戦争場面の力強さは印象的だったけれども、彼の名を高からしめた遠近法の諸問題の解決策がそこに見られるとは思えなかった。ウッチェロは啓示的な発見を知らせるために夜中に妻を起こしたと言われている。のちに、レオナルド・ダヴィンチが遠近法にもっと科学的な基礎づけをおこない、遠近法こそあらゆる芸術の基本であると言明した」(千葉成夫訳、58頁)
 小生、招来した『1914年』とロンドンのウッチェロを見逃している。パリのものは記憶が定かでない。上図のパチリも斜めなので遠近法の研究には不向き、研究の道のりは続きますな。「夜中に妻を起こ」さなくちゃいけないかしら(恐い)。