(5) S氏撮影の肖像写真

連載初回に「今年の京都写真展作品『対談 ENTRETIENS』の基本コンセプトは、「写真展に写真を出さない」と云った気分」と書いたけど、これを発想させたのが、この肖像写真。「写真を出さない」と云ったのに「写真が出ている」のは自己矛盾であるが、自作と他作、営業写真館風の台紙に貼られた肖像写真は経年変化で退色、薄紙にはところどころに黄色い染み。台紙を拡げて展示したところがミソで、オブジェのように見えないかなと期待した訳。撮影は名古屋時代からの友人S。氏が東京に出て写真家を夢見ていた(失礼)頃、写真館で覚えた肖像写真撮影の技術を披露してくれた。4×5のカメラだったように思う。
 夏の季節で、氏の下宿での撮影だった。このとき20代前半。丁度、マロニエ画廊の3階に展示中の作品「活動と参加」で撮られている女性の目線が向けられていた頃のわたしの顔。友人の出品作を事前に知っていた訳ではないので「時間論」の不思議な巡り合わせに驚いた。

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昨日、バッタリ会ったKさんの個展を拝見する為に、昼から出掛ける。その前に寺町御池下ルギャラリー・カトを会場とした、How are you, PHOTOGRAPHY?展の特別企画「写真を踊る」をのぞく。展示作品とダンサーが踊るギャラリーダンスの不思議なコラボ、顔見知りとちょっと挨拶。その後、三月書房、中井書店、水明洞と走って三条白川橋上ルのギャラリー16へ。毎年12月に発表されるK(岸田良子)さんの作品はシリーズが変わって「TARTANS」。日本の紋章のように家柄や団体を現す複雑な模様である。作品サイズをP80号に統一した彼女の新しい記号表現は、色彩や模様をまといつつ禁欲的で、単純な模様から複雑な模様に展開する予定と聞いた。さらに、蹴上げから鹿ケ谷通りを南禅寺に抜けて寒い道を走るが、日が当たるので気分が良い。善行堂でソムリエ氏に一年のお礼を伝え、荒神口から鴨川を渡って帰宅。4時を過ぎると寒い。

ギャラリー・カト 踊者はセレノグラフィカ

鹿ケ谷通りの法然院辺り
 
岸田良子作品「TARTANS」シリーズNo.1の BALMORAL 

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荒神橋から鴨川の上流と下流を望む