シュルレアリスム展

国立新美術館で2月9日から開催されるポンピドゥセンター所蔵作品による「シュルレアリスム展」を楽しみにしていると年頭に書いた。現時点でのHP紹介図版はダリ、マグリット、エルンスト、デ・キリコ、ミロ、タンギーなどの18点---ランキング投票で関心を集める仕掛けのようで、わたしもエルンストの「ユビュ皇帝」にクリックをしてみた。まあ、ダリやマグリットの定番作に人気は集中しているようだが---

 そして、マン・レイの招来品情報について、広報担当のウインダムに問い合わせたところ、写真17点、映画1点(ひとで)、油彩2点(1929年)と教えていただいた(有り難い)。写真については、題名などからでは判別できないので、ここでは、油彩についての楽しみを報告しておきたい。

(1)「サン=ジャン=ドウ=リューズの夜」1929年 73x54cm.
ヘッドライトに照らされた夜景の中に人物の影のみが不安感ただよって伸びている本作は、シュルレアリスム時代のマン・レイを語る時に重要な作品。制作された1929年にパリのバン・リール画廊で展示された後、戦前日本の「巴里・東京新興美術展」(1933年)に招来され、東京、大阪、京都、博多、熊本、金沢、名古屋の他、大連までにも巡回展示されている。1972年頃からは欧州の展覧会に度々出品され、最近では1991年に開催された横浜美術館での「マン・レイ展」に再来日している。今回の「シュルレアリスム展」で三度目の来日となる訳。

(2)「森の中の工場」1929年 81x64.8cm.
金色のボードに直接チューブからひねり出した絵の具が載っている。すばやく描かれた仕事はマン・レイの性格をよく現しているように思われる。本作も制作された1929年にパリのバン・リール画廊で展示されている。1966年の大回顧展に出品されたりして作者が最後まで手許に置いた作品のひとつ。日本への招来は、1991年に開催された横浜美術館での「マン・レイ展」で実現予定だった---カタログに掲載されているものの、実見にはいたらなかった。今回、初来日のはず(?)

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マン・レイ仕事は、写真ばかりが注目されるが、アメリカを捨て無国籍者となった彼の「孤独と悲しみ」が伝わってくるので、わたしは、いつも油彩に感動してしまう---涙がでるほどである。尚、展覧会の会期は3ヶ月にわたり、最終日は5月9日、国立新美術館のみの展示との事。シンポジュウムなどを確認して上京したいと思っている(楽しみである)。