ジャン・フォートリエ展 at 国立国際美術館


古書・萬字屋書店
梅田の阪神百貨店地下道で永く営業されている萬字屋書店が9月末で閉店される(土地の占用許可更新終了、今後はかっぱ横丁の店舗のみ)。大阪出張の折によくのぞき展覧会のカタログなどを廉価でいただいたっけ。戦後すぐにこの場所に移って以来66年、大阪の景色がまた、変わってしまう。

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ポスターに使われている油彩は、国立国際美術館コレクション
抽象表現の画家、ジャン・フォートリエ(1898-1964)の大規模な回顧展が、国立国際美術館で明日から12月7日まで開催される(東京ステーションギャラリー豊田市美術館と巡回し大阪が最終)。雑誌や画集は別として大原美術館原美術館で接した油彩の絵肌と色彩感覚に不可思議なものを感じてきたので、楽しみに3時からのレセプションに参加した。フォートリエの仕事は壁塗りの質感とやわらかなブルー、するどいひっかきに特徴があり、「アンフォルメル紹介」に直接影響を受けていないわたしにとっても、ヴォルス、デュビュッフェとの関連で受容したと思う。


開会の挨拶をされる副館長の島敦彦氏

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それにしても初期作品群のリアリティと暗さはどこから来たのかと首を傾げた。彼にはドイツ的気質があるのだろうか、出自が関係する部分があるのかもしれない。『管理人の肖像』(1)や人質シリーズは別格として興味を持った作品をいくつか報告しておきたい。『脱衣の女』(18)『グラスに活けた枝』(37)『筒型のオブジェ』(87)、そして、何故か『裸体』(108)のデッサン。
 日本には大原美術蔵の『人質(人質の頭部 No.9)』(67)などの代表作があるが、今回は、その横顔のシルエットをそのまま確認できる鉛の彫刻『人質の頭部』(80)に接する事が出来て有意義だった。展覧会会場構成の第2章の中に、ルネ・ドゥルーアン画廊の展示を連想させるような遮光した空間を用意し『人質』のシリーズを置いている。暗く重い戦争の記憶。

 とすると、1890年生まれマン・レイは、陽気なアメリカ人となるのだろうな。哲学的な絵画の対局にある元祖ヘタウマ。そんな事を考えながら、ソフトドリンクにサンドウィッチ、ケーキなどをいただいた。