プリアポスの文鎮

愛しのマン・レイ展 出品: 39, 40

「プリアポス」というのは、ギリシャ神話に登場する生殖と豊饒を司る神。陰茎の隠喩であるともされる。マン・レイは何処かで見付けた鉄玉と金属の筒を組み合わせ男根(のようなもの)を生みだし、写真に撮ったようだが、他のアッサンブラージュと同じように現物は失われた。それを、1966年になって再制作(マルセル・ゼルブ)した銀製のオブジェがケースに入って輝いている。本作は様々なサイズで再制作されているが、「このオブジェの写真を見たほとんどの人は、わたしにオリジナルのサイズを訊ねるのです。その度に、貴方のと同じぐらいだと答えました。」と云うマン・レイの態度をアルトゥーロ・ シュヴァルツ(『マン・レイ : 厳格な想像力』テムズ&ハドソン 1977年 159頁  )が紹介している。
 筆者が『プリアポスの文鎮』の写真を入手したのは1982年6月、新婚旅行でパリを訪れたときだった。その様子については、石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」 第6回 : ギャラリー ときの忘れもの で報告した。持ち帰り額装した後、京都・木屋町のバー KAZABANAで、嬉々としてカメラに向かったパチリが残っている。幸せでしたね。

 

* 会場撮影は関係者の許可をいただきました。感謝申し上げます。