2005.9.1-9.30 マン・レイになってしまった人

September 30,  2005

昨夜、『日録』を書いた後、サイトにアップするのを忘れてしまった。今日で9月も終わる。明日、勤務先が手狭になっていたので引っ越しをすることになり、ここ数日、荷物の整理や荷造りでバタバタ。四年前に移ったままで、開けていないダンボールもあったりして、もう、なんでもほかすぞと、気合いをいれる。

 通勤のお供に、芸術新潮の編集長だった山崎省三氏の『回想の芸術家たち』(冬花社 2005年)を読む。「滝口修造と神楽坂と<前衛>風景」の章があり、興味深い。例えば250頁に

「滝口さんは、どんどん足早に時評、批評、評論の領域から遁走して行く。となると雑誌編集者である私も遠からず氏の周辺から消えて行くことになるのだが、それまでに、未だ何年かの行き来があった。」
  
  
September 29, 2005

制作を続けている『マン・レイの謎、その時間と場所。』は総200頁で100枚の折り帖11セット、この厚みは1.5cmとなるのだが、糸縢りしている四ヶ所では1mm増える。最初に使ったコニシ株式会社のボンドG17の接着力は申し分ないのだが、有機溶剤で身体に悪い。それで、試行錯誤をすること2週間、やっと、解決策が見付かった。パリ在住の知人が、50部も作ったら死んでしまうよと心配して送ってくれた身体にやさしい「のり」を3回塗って凹んだ部分に充分、染み渡らせ固定。作業のしやすい「のり」だが、粘性の問題から、糸縢り部分とそうでない部分の差異1mmの調節が難しい、しかし、最後にはバランスが崩れないように折り帖の固定を調節する手順が上手く出来るようになった。こうして本文を固定した後、表紙との接着には、空気中の水分に反応して硬化する新しいタイプの接着剤(PUR---Polly Urethane Reactive)、コニシ株式会社のウルトラ多用途「エス・ユー」を使用。数日待って、充分に乾燥してから、開いてみると強度と滑らかさに満足な結果が得られた。
       
   
September 23, 2005

三連休初日も缶詰状態で銀紙書房オペレーター。50部完成への道は遠い。プリンター不調での手戻りが多いが、午後、用紙設定を「厚手普通紙」に変更する事により、改善。でも、これは「普通紙」設定より、印刷時間が三倍かかる。ぼちほち、こつこつ続ける。やっと終了した印刷出力は30セット。パリから送ってもらった製本用のりのテストを行う。結果判明は明日の予定。
   
September 18, 2005

一週間以上『日録』をお休みして、本作りをしていた。じっと我慢の毎日である。でも、作業をしながら、眼にした頁をつい読み返してしまうので、困っている、誤字や脱字に気がつき、冷や汗の連続で直したくなる。こんなにあっては「正誤表」も必要なのかな。

 京都写真クラブの人達の展覧会がこの秋は、いくつも計画されている。木下憲治写真展「Kenji from Slideviewer」(Early gallery 9/19-24)、奥野政司、立花常雄、尾上正樹、川西真寿実「堆積する視線」(海岸通ギヤラリーCASO 10/4-16)、鈴鹿芳康作品展「合掌マンダラ」(ギャラリーそわか10/8-29)、そして、国立国際美術館では「もの派--再考」10/25-12/18。


September 9, 2005

在パリの知人へ書籍を送るのにEMSを使った。料金は割高だが、インターネットで品物の情況が検索出来るすぐれもの。「国際スピード郵便」と云う。郵便物番号を入力すると情況が以下のように表示される。

<局国内情報>
-状態- 日付 時刻 --郵便局名--
郵便局で引受 9月4日 12:26 右京
海外へ発送(予定) 9月5日 01:39 大阪国際
あて国名 フランス
あて交換局 CHRONOPOST CDG AP PARIS M
フライト月日 9月5日
<海外情報>
-状態- 日付 時刻 --郵便局名または略番--
海外局に到着 9月7日 10:05 CHRONOPOST CDG AP PARIS M
通関
通関保留理由
交換局から発送 9月7日 15:59 CHRONOPOST CDG AP PARIS M
配達局に到着 9月7日 13:11 75998
宛先に配達済 9月7日 14:51 75998
追跡終了

 品物が移動して行く場面を想像するのは楽しい。郵便業務に詳しい人に尋ねると、国際便での書留郵便は、ほとんど効果がないようで、行方不明になったとき。照会手続きをしてもその回答に恐ろしく時間がかかるので、現実的にはほとんど効果がないらしい。

 ご本人からも、無事到着とのメールを頂いた。安堵。
  
September 8, 2005

今朝も朝顔がけなげに咲いていた、三つ。友人が撮った夕映えの写真をミクシーで見た。貴社時の京都も美しげだった。こんな時、写真は光だと、つくづく思う。
   
  
September 7, 2005

通勤のお供で読んでいた臼田捷治氏の『装幀列伝』(平凡社新書、2004年)に「ウィドウ/オーファン」説明があった。「次ページにきた半端な行や、プロック内に改行で残ってしまう一文字」----銀紙書房の筆者は、この処理のため字数を数えながら原稿を書いています。大変ですが、面白く楽しい作業です。
  
  
September 5, 2005

同僚の手許に大丸京都店6階美術画廊で開催中の『ルオーとフォーヴィズムの作家の版画展』の案内状があり、使われているピエロの表情に惹かれて、帰宅時に覗いた。現物もなかなか良いが、やや、重い感じがした。限定150部で摺師によるサイン、定価は350万円(本体)、並陳のマテイスやブラマンクなどに較べれば、ルオーに軍配。同僚の表情がこの道化師と似ていると感じたためかな----
  
  
September 4, 2005

銀紙書房新刊についての作業が一段落し、量産体制に供え机の回りを整理する。
  
  
September 3, 2005

日本経済新聞朝刊40面に、「近現代史資料 劣化の危機」とした記事。昭和20-30年代の資料が戦争による物資不足による紙質の悪さも原因の一つだが、酸化してしまった資料が70%を超え、21%が折りまげるだけで切れたり破損、48%はコピーをとるだけで破損してしまうと報告している。脱酸処理は一冊平均600円の費用がかかるとの事。それに関連して囲み記事に「デジタル時代でも-- 米では紙での保存主流に」と紹介。マイクロフイルムも劣化するし、デジタル媒体の記録の安全性は10年ぐらいがめやす。なによりも、技術革新に対応しつつ、再生装置の維持保管するのも大変との事。紙の現物を残し、必要に応じてデジタル化するのがコスト的にも利口であるようだ。同感である。ところで、連載小説「愛の流刑地」の冬香が死んでしまった。朝からこんなものを読んでいる読者を想定するのは恐ろしい。日経と云えば「私の履歴書」だよな。この部分だけは、毎朝、読んで出掛ける。今月はキリンビール相談役の佐藤安弘氏。忘れられない祖母の言葉「金額の多い少ないでお客を差別してはいけない。毎日買いに来てくれるお客さんを大事にしなさい」と紹介されている。銀紙書房の基本的な考え方であり、古書店に対する姿勢の原点であるのだが、資金不足の我が身がつらい---- 

 パピヨン縢りを三冊。糊付けまでやって出掛ける。乾いた後に三回接着する、気の長い作業だ。中央図書館、府立図書館と行き、丸善にもよる。6-8階は明日までらしい、京大カードの103番が欲しかったのだが、すでに廃番。デジタル時代にカードで整理は流行らないのかな。でも30年使っているのだから、残念。今回は以前のスクラップブックのようにあわてないけど、店員に京大カードの事を訪ねたら、最初はだれも知らなくて驚いた。丸善が京都から無くなる日が近づく。最終セールで30%OFFだけど、こんな時には、火事場泥棒のようで書物を買う気になれない。

 夜、『マン・レイの謎、その時間と場所。』が無事に届いたとTさんから電話。Kさんからメール。安堵する。
  
   
September 2, 2005

林哲夫さんから無事に本が届いたとメールをいただき安堵する。夜中に出して、昼には届けられるなんてすごい。氏はさっそく「デイリー・スムース  林蘊蓄斎の本を散歩する日々で紹介して下さった。感謝。

 銀紙書房新刊『マン・レイの謎、その時間と場所。』を
紹介するページを作り、「マン・レイになってしまった人」の目次ベージに貼り付ける。注文の出だしは順調で、追加制作に追われる。
   
September 1, 2005

夕食後、天気予報を見ていたら来週前半台風到来。それからあせって荷造りをし、夜中12時、郵便局へ走って投函。冊子小包で送る時、せっかく作った本が濡れるのが恐い。どうか、銀紙書房新刊が無事に皆さんのところへ届くようにと祈った。

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