『三條廣道辺り--戦前京都の詩人たち』


『三條廣道辺り--戦前京都の詩人たち』

石原輝雄箸

限定75部 240頁 限定番号、サイン入り サイズ 21x15x1.6cm

[まえがきより]
 なぜか「手」に惹かれる。それも意志を持ち炎に包まれ、街の曲がり角に潜む驚きの手、若い女の手首から離れ、不意に肩先に乗って震えながら、「詩」を紡ぐペン先となる手。この手は、マン・レイと名乗って頁の間に入り込み、先に進めと命令口調でわたしを促す。燃え尽き灰となって風に舞う運命を知っているかのように、低く悲しい声である。
  本書の主な舞台は、戦前の巴里と京都と神戸、そして名古屋。シュルレアリスムの画家、写真家、映画人のマン・レイと、独逸に留学し映画・演劇を学んだ中西武夫との接点が、不思議な「時間旅行」の出発点となった。マン・レイのレイヨグラフを触媒に三條廣道辺りを彷徨する物語の流れは、京都の詩人たちを蘇らせ、忘れられた詩人俵青茅のエロテイシズムと、詩人で画家の天野隆一(大虹)の仕事を学びとらせた。天野から連なる詩友の道の先に竹中郁が現れたのは、『ひとで』に姿を変えた、「手」の導きである。その場所は巴里であり、神戸でもあった。さらに、こうした仏蘭西への憧憬が、戦前の名古屋廣小路に立つ事をわたしに促し、山本悍右、山中散生と再び言葉を交わす糸口となった。下郷羊雄の旧宅を探すに至ったのも、プライベート・プレスの魅力に改めて惹かれたのも、この流れであり、佐々木桔梗と鳥居昌三の愛溢れる力だった。
 鬼籍に入られた先人たちを訪ね、青春の言葉を聞き、持ち帰る事が、わたしの願いである。成否はともかく、この頁の先に進んでいただきたい……

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著者自装(パピヨンかがりによる手製本)

本文; Aプラン アイボリーホワイト 47.50kg

表紙; ケンラン モスグレー 265kg

表紙カバー; キュリアスIRパール 103kg

印刷; エプソン PX-503A

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[内容の紹介] 
目 次
まえがき ── 6
(1)  <マン・レイ 中西武夫>
 カンパーニュ・プルミエール街の手紙 ── 12
(2)  <俵青茅 天野隆一 錦光山雄二 キキ・ド・モンパルナス 竹中郁>
 三條廣道辺り ── 44
 大虹と隆一、画家と詩人 ── 78
 エロテックな墨流し ── 110
 「ひとで」が巡る巴里・神戸 ── 136
(3)  <山本悍右 下郷羊雄 山中散生 佐々木桔梗 鳥居昌三>
 観月町の硝子窓 ── 168
 海人舎とプレス・ビブリオマーヌ ── 200
あとがき ── 234
資料 ── 236

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本郷のアルカディア書房で中西武夫旧蔵のマン・レイ資料を発見

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戦前京都の詩人 俵青茅詩集『夜虹』の装画に、マン・レイのレイヨグラフが使われている。どこからこの図はやってきたのだろう。筆者の時間旅行は続く。

*[銀紙書房]

三條廣道辺り