「箱の中のユートピア」コーネルの評伝


ジョゼフ・コーネル 箱の中のユートピア』デボラ・ソロモン著(林寿美、太田泰人、近藤学訳)白水社、2011.2.14発行 定価本体3800円+税

家人が出掛けたので、終日の印刷職人、だいぶ要領が判ってきたが、1セット所要の3時間を短縮する事が出来ない、なんとか今日は5セットと思っているけど、どうなりますか。
 矛盾するけど、印刷を確認しつつ読みかけの読書を続ける。書影を示したコーネルの評伝は500頁あまりの大冊、不思議な箱の作者の生涯に関心を持っている訳だが---しかし、著者はフランス的な文化の奥行きには興味がない筆の運びで、ブルトンなどのシュルレアリスト達には厳しい口調。その為、マン・レイがきらったアメリカ的な物言いが随所にみられて、いやな気分を味わう。残された「日記」をベースに筆を進めているようだが、著者の見方でのコーネル像がちらつきすぎて、客観性に欠けるきらいもあるのではないだろうか。(今、288頁まで読んだところなので、後半、変わるかもしれない) 言及する毎にコーネルとコーネル夫人、ジョゼフとロバートが入り乱れて、ちょっと読みにくい。もっともマン・レイへの注記に「だが実際はブルックリン出身の若造にすぎなかった本名エマヌエル・ラドニッキこと」(100頁)とあったのに反感を持ったのが長引いているためかもしれない。
 本書にはコーネルの生涯に関する興味深い事柄(初期映画への関心や新ロマン主義との関係)が散りばめられているし、彼の「視覚的な所有」といった気質が指摘されていて参考になった。著者は「コーネル研究のゆがみのひとつは、コーネルをシュルレアリスムとの関係において捉え、その当時ほかに芸術の動きはなかったかのように考える傾向があることである」(153頁)と書いているから、わたしなど反省しなくてはならないだろうな、何時も箱を覗いてうっとりするばかりだからな。

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印刷出力を昨日4セット、本日5セット(累計24セット)行いました。備忘録として、今日の終了時刻はそれぞれ、9:49 13:10 16:19 20:30 22:50 (調整時間や並行出力があるので、間隔は不揃)