上海・蘇州二泊三日---(2)

2日目の朝、モーニング・コールは6時50分、良いお天気になった。早速、1階に降りて朝食・バイキング、窓側の席に通され、ソーセージとベーコンとサラダ、パンをちょっと温め、アメリカン・コーヒーですっきり--食べられないほど取り込んでくる女性陣には負けるな。レセプションで日本宛の切手を求める、航空便で葉書一枚6元。

2111号室からの眺め

Park Cafe
出発は8時30分、20年前までは湿地だったと云う高速道路を真っ直ぐ西に向かって走る。ところどころで高層の集合住宅や新幹線の高架橋などを見るものの平坦な風景の植生は日本と同じかと思う。樹木の下部1mほどが規則的に白いのは、冬場の害虫予防で、石灰が塗ってあると陳氏が説明してくれた。1時間20分で蘇州に到着。

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最初の見学は、中国四大名園の一つである留園(1997年に世界文化遺産へ登録)。美しい通りに面した入り口は小さく造られていて、贅をつくした庭の存在を隠す意図があるようだ。日本人の価値観からは異論があるかもしれないが、「賄賂」によったとしても、素晴らしい庭園であり、それを現代の我々が観て楽しんでいるのだから、「賄賂」に感謝をしなければ」とは陳氏の説明。 明代の地方官僚が特別に得た資金をつぎ込んで調えた庭園には個人趣味の乱れがあるのかもしれない---わたしのマン・レイ狂いだって個人主義の最たるものだから、人の事など言えないな。科挙一代の稼ぎで3世代は食べられるとも。




同じ意匠のない漏窓からチラリと見える庭の設え、空窓と組み合わされて、直ぐには見せない焦らせ方こそ、個人主義だろうな。丁度、園内は菊花展の最中で、美しく飾られている。

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東部の最奥に置かれた穴の空いた平たい石が「冠雲峰」と言う有名な太湖石---平均水深2.5mの太湖から産出された高価な石灰岩(水の浸食で穴が空いている)、湖から取り出すのも、町へ運ぶのも大変な作業であったろう。中国人が石を好きなのは、そこに置いたら動かない事だとは陳氏の説明、平面の物を立てて垂直を演出するのは宇宙の深遠と交わる事、これはわたしの印象。


歩きながらのパチリ、パチリだから、気楽なシャッター、こんな場面が好きだ。留園を出る目の前に果物を一杯積んだ女性、最高の色彩だと、またまたパチリ、こんなことばかりしているので、家人に嫌がられる訳。

留園路

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蘭莉園刺繍研究所に連れて行かれ、土産物の斡旋、敷地内のレストランで蘇州料理の昼食。お焦げや魚のあんかけ、中国麺などを頂く。テーブルに曲師がとりついて「蘇州夜曲はどうですか、一曲30元」とやっているけど、観光客相手の陳腐な皿でこの店の食事はいただけなかった。それから直ぐ近くの寒山寺へ。

中国のお寺の塀は黄色に塗られている。



寒山寺は臨済宗の古刹であるが、戦災や雷などで幾度も消失し、現在の建物は1906年の再建と云う(どうりで傷みがない)。寒山拾得の故事や唐代の詩人張継が詠んだ漢詩「楓橋夜泊」などで知られる。風狂の二人については14世紀の画題で親しく、また、漢詩科挙の試験に落ちた故の心の暗部に響く鐘の音の奥行きに満ちている。月落烏啼霜満天江楓漁 / 火対愁眠姑蘇城外寒山 / 寺夜半鐘聲到客船 中国の烏は11月にしか鳴かないから、よい季節に観光されていると陳氏。大雄宝殿の南東側に屋根の大きく反り返った2階建ての鐘楼があり、5元払えば誰でも3回自由に鐘を撞くことができる。早速、試してみた(ツアーではわたしだけ)。鐘の真下に黄金の仏様、窓から境内をパチリ。これは楽しかった、余韻がなんともいえない。

前の駐車場では臭豆腐を売っていて、その鼻のひんまがる事といったら、倒れそうになるほど、近付かないとバスに乗れないから恐ろしい。さて、蘇州名物のシルク専門店に連れて行かれ土産物の斡旋。製糸の行程や双子からの絡み合った布団用蚕などを見学、軽くて身体に優しいと上手い日本語、圧縮すれば持ち帰るのは簡単と言われて、購入する人もチラホラ。こちらは絵葉書セット30元のみを求める。しばらく休憩してから水路巡りのオプションツアーへ。
 殷代から残る石の橋を幾つか抜ける。蘇州は東洋のベニスと称される水の都なのだそうだか、人工の運河なので流れは緩く汚なく感じる。陳氏の自宅は水路から10分程とか---









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山塘街の古い通りを、トラピックスの旗を頼りに一同、そろって歩いた。淡水の様々な魚が料理を待って道端に並べられている。肉や野菜や香辛料、食欲のすごみに気弱なわたしたちはたじろぐばかり。「この魚どこで捕れたのかしら」と家人、とにかく人が多い。日曜日の夕方で道路は大混乱、バスの前で救急車と乗用車が接触事故、運転していた女性の嶮しい声が響く。
 上海へ戻る高速道路は大渋滞だった。これはいつもの事らしい。車窓から市内の夜景を楽しみ30分程遅れ外灘の船着き場近くのレストランへ到着。

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上海蟹の甘いことといったらない、身は少ないけど、美味いです。


本日、二つ目のオプショナルツアー、黄浦江のナイトクルーズへ参加。陳氏の説明では雨上がりで埃が落ちて綺麗だという。観光客の数は半端じゃない。夜風に降られながらライトアップされた建物に見とれる。電気代は国家が負担しているそうだ。さてさて、ホテルに帰ったのは9時15分、家人たちは部屋に戻らず隣りに建つショッピング・センターへ直行、中国でしか手に入らないと云うお菓子を探し始めた。---グリコのCollon天津甘栗風味と柔心脆巻奶咖味、同じくPocky牛奶芒果味などなど。わたしの方は専門店で、お金の貯まる三本足のカエル「招財蛙」の小さいのを求めた(28元)。
 さて、部屋に入ってNHKを付けるとソフトバンクホークスが日本一となっていた。直ぐに消したので試合の様子は知らない。