350年程前の油彩『天文学者』を観た。


京都市美術館

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今週から京都市美術館で始まった『ルーブル美術館展』へ行った。お昼時をねらって12時前に到着すると、人影もまばらで、ゆっくり拝見する事ができた。お目当てはフェルメールの『天文学者』(1668年)、名作には先入観がつきまとうが、想像より淡い色彩が第一印象。光の扱いは申し分なく、地球儀に触れる指先がドラマチックで、物語性を感じる画面構成だった。小品なので混雑していると嫌だと思った訳だが、ゆっくり、何度も拝見した。友人に聞くと、開催から3日経って一段落したエアポケットとの事。
 展覧会の副題は「日常を描く──風俗画にみヨーロッパ絵画の真髄」。最近、欧州の人達による搾取の歴史を訝しく感じる事柄が多いので、紀元前のオリエント文物を前にすると素直になれないし、「労働と日々」の章で、両替商の夫婦が描かれていたりすると、依頼主との関係にわだかまりを覚えてしまうのである。

ルーブル美術館展』6月16日(火)〜9月27日(日)

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 もっとも、グルーズの『割れた水瓶』(1771年)に描かれた乳首の美しさには、惹かれてしまうので、視覚は正直だと思う。その伝で言えばプーシェ『オダリスク』(1745年頃)の解剖学欠如はいただけなかった。布を被せて辻褄を合わせるのは、視点の合成に役立つから、後にセザンヌに繋がるかもと、想像したりした。展覧会で興味惹かれた作品は、ダリが描くガラにそっくりのホンディウスによる『鳩売り』(1673年頃)と、シュルレアリスム的な謎をたたえたヴァトーの『二人の従姉妹』(1716年頃)だった。

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絵葉書 ジャン=アントワーヌ・ヴァトー『二人の従姉妹』

絵葉書 ヨハネス・フェルメール天文学者』at 枡富