光誕祭 第129回

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ロサンゼルス タイムス コレクション より引用。

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今日はマン・レイの誕生日。亡くなった人の誕生日には、129年前でも複雑な感情を持ってしまう。画面は先日、ネットで見つけた写真 ── 自作の前で誇らしげな76歳のマン・レイ。会場はロサンゼルス郡立博物館リットン画廊で1966年10月と思われる。これは300点ほどの油彩、コラージュ、自然絵画、彫刻、オブジェ、素描、レイヨグラフ、チェスセット、書籍を展示(肖像写真の出品は拒否)した彼の大回顧展。彼は講演もしており、その記録を読むと会場で「未来をどのように描いておられますか?」と云う質問に

 

「それも大きな問題です。貴方にとって100%ですね。(笑) 誰かがわたしと反対の事を言うのではないかと考えて、講演の主題をひとつ選んでいます。(笑) 貴方は驚かれたでしょう。(笑)  将来について言えば、何をするか、わたしたちは芸術というものを認知出来ないのではないでしょうか。わたしがオールド・マスターをどう思うかと尋ねられた時と同じように、彼らがわたしをどう思うかと貴方にお尋ねしたい。…… オールド・マスターよりも、わたしたちがしている事の方を理解されるでしょう。それが、芸術の未来なのです。それは、今日のわたしたちが理解できない形をとるでしょう。これが、未来についてわたしがお話できる事柄の全てですね。どうして、未来を心配なさるのですか、貴方もわずか100年しか生きられないのですよ」

 

と答えている。人生が引き算の局面に入って焦るのは、わたしばかりではないだろう。76歳のマン・レイのように誇らしげに笑っていたい。刊行したばかりの「眠り姫物語」(銀紙書房)の評判が気になる、手許に残る幾冊かの本はいつ嫁入りしてくれるのだろうか。