国立国際美術館・30年のコレクション展

 朝早くから出掛け国立国際美術館での「30年分のコレクション」展を鑑賞する。学芸員の方から同展にマン・レイ作品を出していますと教えて頂いていたので、楽しみだった訳。展示品はセザンヌから始まって、床面を掘り下げたスペーに置かれた須田悦弘に至る約400点。モランデイの「静物」、ヴォルスの「構成」、ジャドとクリストも良かった。前後関係と部屋事の構成が考えられた展示となっている。マン・レイは「ダダ・シュルレアリスム」の部屋でデュシャン、エルンスト、コーネルなどと共に展示された、ミクスト・メディアの「イジドール・デュカスの謎」('01年購入)とデャシャンに関連したモダン・プリントの写真8点('02年寄贈)。どこにあった品物なのか知っているので、なるほどと思った。欲しいな。部屋の別壁面には阿部展也の油彩(これが素晴らしい)、横には詩画集「妖精の距離」。日本の現代版画を扱った部屋の一角は京都勢が席巻していた、木村秀樹、田中孝、安東菜々、山本容子、井田照一と並ぶと、それぞれとの人間関係が作品にオーバーラップしてしまった。会場ではアンフォルメル、具体美術、ニューヨーク派、ポップ・アート、コンセプチュアル、ヌーヴォー・レアリスム、反芸術と戦前から現代に至る美術の潮流が手際よく紹介されている。観ながら、アメリカの作家は好きになれないなと思った。価値観が違うんだ。時代が移りスタイルが変わる、美術に関心を持った早い段階からの同時代的記憶が、ゆっくりと作品を押し出してくれる。そして、歩き疲れた最終22室の、出口辺りに内藤礼の「死者のための枕」2点が絶妙のタイミングとなるように置かれている(女性の身長なら目線と同じ高さに作品がある)。薄手の絹と糸で造られた小さな枕、繊細なオブジェは、やがてむかえる私たち自身の死を、空間に拡げている。参ってしまった作品だった。

 2時からの講演会で島敦彦さんのお話をお聞きする。いろいろな美術館で撮られたスライドを中心に、作品を人間にたとえ「感動よりも観察を」と切り出されたが、いろいろな場面で感動された作品との出会いのお話だった。画学生が陥りやすい「真似しちゃいけない画家の法則」と云うのがあるそうだ(サイ・トゥオンブリもその内の一人らしい)。

 その後、カロで珈琲、書店業界を襲う不況風の話題を少々、でも石川さんのお店は盛況で嬉しく思った。迷惑をかけてはけないので、早めに引きあげ南森町まで移動。ハナ書房、天牛書店、矢野書店、よしむらを重点的に覗く。Pierre de Massotの「ANDRE BRETON Le Septembriseur」(1967)、塚原史の「アヴァンギヤルドの時代」(1997)、ジュール・モヌロの「超現実主義と聖なるもの」(1974)を購入。7時を過ぎてしまったので、JR天満から大阪へ急いで移動し阪急古書のまちへ。リーチで「20世紀。美術は虚像を認知した」という展覧会カタログを見付ける。そして、アルカードでしばらく世間話。どの店でも本が売れないと嘆くこと、嘆くこと。現物を欲しがる若い人がもう、いないと云う事らしい。

 がんこ寿司でビールを飲んで帰宅。阪急電車で良い気持ちになってウツラウツラと。