「キキ 思い出」 アンリ・ブロカ版 1929年


KIKI SOUVENIRS, HENRI BROCA, 1929
北フランスの港町ル・アーヴルからの荷物が届いた(現地11月25日発)。送り主のコッター氏が厚紙で補強せず無造作に本を入れているようなので「仮綴本をそんな状態で袋に入れたら背が痛むぞ」と取り出すコレクター心理は不安で困った。点検したところ、やはり割れている、でも氏が書籍の状態説明で書いていた事柄なので我慢する---当然だけど。古いもの(1929年刊)なので合格点としよう。到着したのは、いつかは入手したいと思っていたHENRI BROCA版のKIKI SOUVENIRS。30年以上前に大阪のリブレリ・アルカードで見かけた一冊は、残念ながら製本されてしまっていた。キキの展覧会などでケース越しに観ていたが、改めて、自分の蔵書として対面するのは嬉しい。マン・レイやキキに関する知識を格段に蓄積した、わたしの経験を総動員させて頁をめくる。

 この本の邦訳が河盛好蔵によって美術公論社から「モンバルナスのキキ」として刊行(1980年)されているけど、全然違うな----原書は画家キキを紹介するモンパルナスの画家達のオマージュであり、キキの画集として編集されている。後半の回想部分と影響しあってキキの作品(マン・レイの所蔵品も沢山図版掲載されている)を、より立体的に楽しませてくれる。マン・レイの「自伝」には恋人だった二人が疎遠になっていた本書刊行当時の様子が書かれてる。---「わたしとキキのあいだにはもう争いも話合いも無かった。彼女はときおりその本について相談しにアトリエに現れた。そしてわたしはよそよそしく振舞った。二人はもう単に仲の良い友達にすぎなかったからだ。本が出たとき、初刷の一冊をもってきて泣かせる献辞を書き入れてくれた。」(マン・レイ自伝 千葉茂夫訳 美術公論社、1981年、162頁)

キキの献辞とデッサン

マン・レイが所蔵するキキの絵

マン・レイのカメラの前で、様々に表情を変えるキキ。9章ヴォージラール町を飾る写真 
今日はもう一冊、マン・レイ資料が届いたのだが、その報告はいずれ---