写真展 オン・ザ・ロード

写真集に影響されて、写真を生きてきた者にとって、美術館の壁面に額装され掛けらた写真への違和感がながいこととれなかった(ウイリアム・クラインや東松照明などでそのように感じた)。それが、今回、大阪の国立国際美術館を会場にして開陳された森山大道写真展では、いっきに取り払われた---感激ものだった。会場構成でこれほど変わって感じられるとは思わなかった。若い学芸員・中西博之と蔦谷典子に感謝しなければならない---有難う。第一室の新作大判カラー写真三段掛けは森山の指示であったと云うが、それ以外は学芸員のこだわりによる展示。写真集好きにはページをめくる出会いの感動にも似たライティングがほどこされた各部屋の構成はなるほどと思う事の連続だった。一見脈路のない森山の仕事が写真集でくくられることによって、時代の気分が、ビビットに伝わる。すべての写真集を手にしてきたわたしとしては、一人ぼっちの対話が、万人との対話に変わった現場に立った気分。これで、原稿一本掛けそうだ。会場の一角には写真集の現物や森山が使うリコーのカメラも示されている。楽しい展示だった。


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内覧会は14:00から始まり、15:00からレセプション。GRデジタルでは近付かないといけないので、作者のスナップは撮らないままとなった。(以前、撮ってもらったツーショットがあるから、がまんしよう)。会場にはアルコールも用意されていたので、いただき、友人、知人、関係者の方々と歓談した。

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そのあと、京都写真クラブのHさん、ドイツで長く暮らしアメリカにも住んだと云うTさん、美人デザイナーを交えて一杯、二杯とバカ話を続けた。「森山さんの写真まね出来そうで出来ないんだよね」とか「写真家はよく食べるけど、酒は呑まないのよね」などと続いた後、「森山さんの写真はきらいだ」などとなって、それぞれの影響力に感服した。わたしの場合、今日のように森山作品に感動したのを考えると、人生の節目にさしかかっているのだと思った。60歳の森山は「犬の記憶 終章」を上梓しているが、わたしの方は『三條廣道辺り--戦前京都の詩人たち』となる訳か、京都に戻ったのは23時ごろだった(酔っぱらってしまった)。