『言語社会』第7号


『言語社会』第7号 21×14.8cm 382頁 一橋大学大学院言語社会研究科 2013.3.31発行
マン・レイを研究対象とされる若い人が登場した。それはCiniiの論文検索で知った小山祐美子さんで一橋大学大学院で勉強をされていると云う。論文のタイトルは「マン・レイの写真作品の変遷とその特異性 : ファッション写真を中心に」というもので、早速、機関リボジトリからPDFファイルを抽出し、拝読させていただいた。最新のマン・レイ研究を踏まえながら、写真作品における女性表象に対して独自の問題提起をなさんとする意欲的な論考である。その内容については、個別の読解をお薦めするが、「マン・レイの表現の多くは身体の一部をなくすところで完結しており」とした後、「衣服が主体であるファッション写真において、その衣服をまとう身体を解体・再構成するという行為がなされることは決して多くない」と続く。こうした暴力的ではないマン・レイ写真への共感が彼女の文脈から感じ取れて好意を持った。「マン・レイにとって、個人性を重視する作品を制作することは自然な流れである」とする指摘などは秀逸ではなかろうか。
 PDFファイルを印字出力し糊付けした小冊子で読んでいたのだが、図版も多数使われた論考、紀要の現物で読まなくちゃと手配を一橋大学大学院言語社会研究科へお願いした。届けられた冊子は「1930年代台湾における大衆文化」と「マルクス主義批評の現在」の二つの特集から構成され、その後に学生投稿が続いている(小山祐美子さんの頁は209から225)。