『クーピュール』 創刊号


阪急電車京都線 桂川鉄橋(水は引いたけど。)

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巴里の土産話しを聞きにある方を訪ねた。一ヶ月の滞在で多くの古書店古書市を楽しまれた様子で、ご興味がおありのローラン・トポール関連の成果を幾つか拝見させていただいた。わたしの好きなシュルレアリスムに関する紙モノも確保されての帰国だったので手福・眼福のひととき。エディション・シュルレアリスム刊の小冊子『正当防衛』(1926)と『白昼堂々』(1927)に痺れました。洒落てますね。こうした小さなサイズで刊行すると趣味的な「豆本」になってしまう危険があるので躊躇してきたけど、銀紙書房本もこのスタイルでやりたくなった。しっかりした本を3年近くかかって出していくのと、状況の変化に即しながら打っていくのと、どちらが良いだろう---どちらもやりたいか。
 そして、土産物の話しになった。巴里市北部の古書店でジョゼ・ピエールなどが1969年から数年のあいだ発行していたシュルレアリスムの雑誌『クーピュール』を見付けられたそうで、創刊号に、マン・レイの写真「願い」と短い言葉が掲載されていると云う。手に取ると迫力のある大判で新聞の雰囲気、紙質が良いので洒落ているのか6頁目の中程に掲載されていた。エロテックな写真下段のメッセージは「わたしは新しい絵を一度も描いたことがない」。確かイタリアのマルコニー画廊を会場に同年の4月から5月にかけて開かれた『マン・レイ』展のカード(3枚セット)の一枚で、72年の大回顧展でも使われた。「わたしは新しい絵を一度も描いたことがない」と声明せずにはいられない、マン・レイ、79歳の気持ちがとても判る。
 『クーピュール』は72年までに、全7号発行されたようで、揃いとなると古書価も高い、たまたま、創刊号を二冊見付けたとの事で、一冊をお譲りいただいた(深謝)。

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 お盆のお休みが始まりますね。フランス語の「coupure」には「切り傷」とか「(時代・世論)などの断絶」の他に小額の「紙幣」や新聞の切り抜きといった意味があり、同誌は、いろいろな新聞や雑誌記事の寄せ集めで成っている。耳をふさいで、目を閉じて、時代が過ぎ去るのを待っているわたしのスタンスでは、いけないのかしら。阪急電車に乗って自宅に戻るまで『菩提樹の花降る街』を読んだ。  

coupure No.1 octobre 1969

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再来週には地蔵盆ですね。