『光の涙』から生まれたあなたは、

 

 昨日画像をアップした古書店の目録『bonsoir, man ray』を手にとって、改めて商品のラインナップにため息をついていたのだが、ネット検索で旧蔵者が一昨年の七月に亡くなられていたのを知った。その人はイタリアのジャーナリストで、歴史家で、美術評論家で、映画評論も手掛け、世界的に知られるマン・レイ研究の第一人者。生涯をマン・レイに捧げた先達なのであった。追悼文を書いたマリサ・ザッティーニは、「20世紀の歴史的巨匠や若いアーティストに関心を向けた」ヤヌスの業績について、およそ100の展覧会を企画し、美術図書館と近代・現代美術ギャラリーの設立に尽力された。若い頃にこの評論家と知り合ったマリサは、自身の師でありメンターだったと語り、ヤーヌスも若い頃からマン・レイと頻繁に会い、友人、崇拝者、専門家として国際的に知られる人になったと紹介。さらに「『光の涙』から生まれたあなたは、私達をどこまでも連れて行ってくれました」とヤヌスの子息グラウコの詩を引用、それは「優しく親切な魂よ、再び花開く準備をしてください」と結ばれている。
 カタログや研究書で知っていたヤーヌスの名前が、小生にとって具体的になったのは、朝日新聞社が刊行した『マン・レイ写真集』(1980年)に「マン・レイ──哲学的省察の芸術」を寄稿された時だから42年も前のことになる。氏は53歳だった。そのあと、いろいろな事柄を教えていただいたが、2013年にいただいたメールには

 あなたはマン・レイの記念碑を建てたが、何よりも彼のすべての作品の秘密である「欲望のエネルギー」を理解した。マン・レイの「東洋的」な側面が、あなたの中に最後の啓示を見出したのです。

と書いてくれた。今は謹んで氏の冥福を祈りたい。

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ヤーヌスさんについては、
https://manrayist.hateblo.jp/entry/20101222
https://manrayist.hateblo.jp/entry/20130105

 

マリサ・ザッティーニさんについては、
https://manrayist.hateblo.jp/entry/2019/05/20/173628
https://manrayist.hateblo.jp/entry/2019/05/21/120000

 

など、このブログでも紹介している。