シュルレアリスム 「歴史と理論」

 ジャクリーヌ・シェニウー=ジャンドロンの「シュルレアリスム」(人文書院 1997年刊)をやっと読了。通勤の朝しか読めないので、一日10分の読書。この人にも大事な問題提起を教えられた、訳注も有意義だった。「結論に向けて」の章に、「作品を取り巻く状況が注意深く検討されねばならないし、その意図は美学的水準においてだけでなく、論理的、あるいは政治的次元でも測定されることになる」とあり、そのしばらく後に「それらは氷河期の大異変を通過した後に私たちの手に残った、堆積した残留物なのである。それらは幾つもの結晶した断面をもち、最も密度の高い万年雪の層に位置するが、またその一部はパウダー・スノーになって飛び散ってしまった(私の思い描いているのはシュルレアリスムの展覧会であるが、その開幕イベントや展示物は、今日では、痕跡を探し求めねばならない歴史上の事件と化している)」(317-318頁)とわたしの関心領域への言及が続く。

 飛び散り舞い降りた雪の結晶って、掌に乗って美しいのは一瞬で、みるみる溶けて消えてしまうんだよね。なくなってしまう物だからこそ、銀紙書房社主は情熱を感じ、仕事をしてしまう。本にして残すといつまでも美しい、量が多ければ多いほど、期間が長ければ長いほど、万年雪の層だよね。(こうご期待下さいませ)。