マン・レイの芸術に関する著作集


MAN RAY: WRITINGS ON ART hardcover 26×18.7cm PP.456

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昨年の5月に刊行が予告され、直ぐにアマゾン(日本)のサイトで注文した『マン・レイの芸術に関する著作集』(ポール・ゲッテイ美術館刊)。海外の知人から「読みましたか」と連絡があったりして気を揉んでいたのだが、いつまで経っても日本での取扱が始まらない(Abebooksやネットのオークションでは登場していた)。しかたがないので、注文を切り替えアマゾンの米国から直接送ってもらうことにした。そして、やっと昨日到着。
 編者のジェニファー・マンディはティトのコレクション調査部門の責任者で、これまでにもシュルレアリスムに関する展覧会を幾つか組織している。また、サザビーズのアンドリュー・ストラウスと『マン・レイ: 人間方程式 --- 数学からシェークスピアまでの旅』展で活躍したエドアール・セビリーヌが協力している。画家や写真家として知られるマン・レイだが、若い時から文学の影響を受け、「言葉」でも自己を表現してきた。本書には「視覚詩」的な表現の他、ダダ・シュルレアリスムの出版物で発表したエッセイ、展覧会のカタログなどはもちろん、インタビューや、プライベートな小部数の出版物からのテキスト、ジュリアン・レビュー、ジェームス・ソビー、アルフレッド・バーといった美術関係者を中心とした私信も多く集められている。
 ゲッティ美術館の図書資料として保管されている手紙類を調査したいと思っていたわたしには最高のドキメントであるし、カード形式の『我が愛しのオブジェ』が全ページ再現されていたりするので、パラパラ見始めた眼が喜んでいる。本書はマン・レイの研究者に広く開放された基礎資料となる訳で、今後の研究が飛躍的に進む事が期待される。一般のマン・レイ・ファンにとっても作品理解の手助けになるとともに、無国籍者の悲しみを共に味わう機会になるだろう。---数年のうちに日本語版がでるのではと期待したい。

pp.22-23