瀧口修造とマルセル・デュシャン


土渕信彦氏

「瀧口の書斎に掛けられていた、マン・レイの映画『ひとで』のシーン、瀧口の青春に繋がるものと思う。」(土渕)

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ozasa kyotoでの『瀧口修造岡崎和郎: 二人展』も終盤(会期は2月12日迄)となってしまったが、盟友の土渕信彦氏が解説する関連企画「瀧口修造マルセル・デュシャン」が、本日催されるので出掛けた。わたしも瀧口とデュシャンの関係については、ある程度の知識があるつもり---とはいえ、生涯を瀧口研究に捧げる盟友の情熱的な語り口に心を揺さぶられた。今年はデュシャンが小便器にマットと署名し『泉』と題して美術館に持ち込んでから100年経った節目の年、これを「選択の芸術」と紹介した後、瀧口のオブジェの店の概念を「無差別の芸術」として、「自ら選択したものでなくても、そこにあるものがそこにあるだけで「芸術作品」足りえるように、展示・流通の枠組みを作り替える。」とスライドを交えて示してくれた。そして、デュシャンの基本色がグリーンであることや、瀧口のデカルコマニーに現れた動脈と静脈、赤色と青色の扱いがポスターに書き込まれているなど、いくつもの重要な指摘に溢れたトークだった。土渕氏は瀧口と関西との関係、具体やもの派にも言及され、俯瞰的な視点をも有した内容だった。会場には著名な美術家や研究者が訪れていたし、わたしの隣席がレコード・コレクターのM氏だったので、ロトデッサンの図形が、どのようにジャズとシンクロするのかと考えたりした。マン・レイとのエピソードもはさんでくれたので、予定時間を大きく越えたトークだったのに気が付かない2時間だった。有難う。

マルセル・デュシャン語録』のためのポスター案(実現せず)

画廊の応接室にも、瀧口のデカルコマニーが掛けられている。

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左からときの忘れもののブログで「書斎の漂流物」連載中の夜野悠氏(2月5日掲載の第11回は「妖精のディスタンス─瀧口修造の小宇宙」)、画家・装幀家、エッセイストの林哲夫氏、壮絶な現役レコードコレクターのM氏。トークの後、画廊で飲み物が振る舞われたので、楽しく歓談させていただいた。

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キュートなS嬢は、快くボーズをとってくれた。

デュシャンの展覧会カタログと繋がる岡崎和郎作品『TEHON』(1981/95)