みらいらん 第11号

21×14.8cm 156pp.

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 洪水企画の池田康さんが発行している『みらいらん』第11号が届いた(2023.1.15発行、定価税込1100円)。今号は「本ってなに?」の小特集。紙の本にこだわる身としては、「本」の行く末が気にかかり、田野倉康一氏のテキスト「知の十字路」(56-59頁)で図書館の現状を拝読し気が滅入った。納入した「本」が次世代に引き継がれると思うのは、幻想なんですな。ある友人は「図書館人の話題は分類ばかり」と言うが、地元の京都府立図書館が汚染されないのを願う。
 今号のような池田氏の「本」についての問は重要で、今が「問」に効果を期待できる最後のタイミング、本好きは絶滅危惧種にあたるのだろう。この意味では「各頁が切断されバラ売りされてしまった」不幸があったとしても土渕信彦が紹介した「瀧口修造の手づくり本」(68頁)のアプローチに希望をみたい。銀紙書房の方法は、この領域なのです。

 

 実は、池田氏のはからいで小生も、アンケートを書かせていただいた(71-72頁)。しかし、銀紙書房などの(超)リトルプレスに言及するのは逡巡、他の回答の方々も「一般には知られていない隠れた名著」を取り上げられたようだ。「本」は極めて個人的なものだと思った次第。本づくりの立場としては、和紙に縦書きの活版刷り、繊維にくい込んだインクが、自然に馴染み一体化する美しさに、惹かれる心情が、本を支えると思う。縦書きでの「仮名交じり文」に親しんでいるので、横書きは苦しい、美しくないのです。なので、小生にとっての「本」は、縦書仮名交じり文紙片の連なりになりますな。器があると内容がついてくる、これが、文化。シンプルな作りでの銀紙書房を守っていきたい。

 

洪水企画 → http://www.kozui.net/frame-top.htm