画家たちと戦争: 展(1) at 名古屋市美術館


白川公園

名古屋市美術館
酷暑の名古屋に帰省して、白川公園内の名古屋市美術館を訪ねた。館内一階の橋を渡って光溢れるエントランスに立つと『画家たちと戦争: 展──彼らはいかにして生きぬいたのか』と、考えさせられるメッセージの間に、「8月」の太陽、あるいは爆弾を連想させる飛沫が大小で3個。戦争から夏の太陽が繋がっている。
 右側の通路を抜けて最初に眼に入るのが北脇昇の『春に合掌す』と『周易解理図(泰否)』。観客も思わず手を合わせる導入部である。北脇が大好きなわたしは、左端奥の『クォ・ヴァディス』と右壁面中央の『眠られぬ夜のために』を、交互に観ながら、歩き出せない感覚にとらわれてしまった。展示室で担当学芸員の山田諭が、何を示そうとしているのか、理解出来ないのである。背後には、珍しい油彩(他展では、ほとんど展示されていない)『墓地』。北脇は最初から変わった画家だと思った。変わっているから、戦争の爪痕以上に作者の個性、表現の問題に「眼」の関心がいって、時代状況が現れないのである。戦争に焦点をあてたのではなく、画家に焦点をあてた展覧会だと気付くのに、時間が掛かってしまった。

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 7月18日(土)から始まった企画展『画家たちと戦争: 展──彼らはいかにして生きぬいたのか』は、戦争の時代を生き抜いた代表的な画家たち14名(横山大観藤田嗣治恩地孝四郎北川民次、福沢一郎、岡鹿之助、北脇昇、福田豊四郎、宮本三郎吉原治良、吉岡堅二、山口薫、香月泰男松本竣介)に注目し、狭義の意味での戦中期(1937〜1945年)を挟んで、戦前期(〜1937)と戦後期(1945〜)に制作された作品を一同に展示し、作品の変遷を展望することで、彼らが戦争を「いかにして生きぬいたのか」について検証しようとするものです(カタログ7頁を一部訂正・引用)。---9月23日(木)まで、名古屋市美術館でのみ開催。

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 続く


展覧会カタログ 『春に合掌す』(右)、『周易解理図(泰否)』88-89頁